
「建物は減価償却の対象となるが、土地は減価償却しない。」このことは、既に減価償却費の計算プロセスを説明した章に何度か登場した内容だったことと思います。一般的な不動産の売買契約書では、土地・建物の売却価格は別々に表示されておらず、その合算金額のみしか分かりません。つまり、建物の評価額が契約書に明記されていないというわけです。しかし、減価償却の基礎計算に使用される購入金額は、土地・建物の合算金額ではなく、建物の評価額です。ですが、たとえ建物評価が契約書に明記されていなくても、不動産を購入した翌年3月15日までには、建物評価を決め確定申告をしなければなりません。また、建物評価額を決めて減価償却費を計上した段階で、毎年減価償却に計上できる金額も確定してしまうのです。「減価償却費はあとから修正できない!」と、いうことは覚えておきましょう。
要するに、建物評価を高く評価し、土地代を安くすれば、毎年減価償却に計上できる金額が大きくなるということなのだ。減価償却費は単年度のものではなく、償却が完了するまでの期間、修正がきかない項目なのですから、売買途中でゴタゴタしている最中であっても、建物価格を高く評価する方法を徹底的に模索する必要があるんです。とにかく、減価償却費を甘く見てはいけない。キャッシュフローに大きなインパクトを与えることは、再三再四述べてきたとおりだ。では、建物の評価額を引き上げるにはどのような方法が考えられるのだろうか。新築物件の場合が建築費ははっきりしているため、建物評価額を調整する余地は少ないが、中古物件の減価償却費というのは売買契約書の取り交わし方や、売主からの資料が入手できるかどうかでずいぶんと変わってくるものなのですね。
売買契約書では、「建物の評価額をどう判断するのか」、この点が最も重要なポイントです。土地部分については、いくら高額な土地を買っても減価償却費はいっさい計上できないため、購入価格のうち、減価償却として計上できる金額はいくらあるのかが、重要なポイントとなるのです。申告をするときにはなるべく建物の価値が多いように解釈できるようにしておくと、計上できる減価償却費が増え、申告所得が少なくなるため、税金の支払いも少なくなります。つまりは、建物評価を引き上げることが節税に直結するのです。
まず、最初に基本を確認しておきましょう。不動産取引の場合、土地には消費税はかかりません。建物及びその付属物などにのみ消費税がかかります。消費税は消費に対してかかるものであり、土地の売買は資本移動であって消費ではないと考えられているため、消費税はかかりません。一方、建物の売買はフツーに消費税の対象となります。しかし、売主が課税事業を行っていない個人の場合は非課税です。これに対し、売主が業者または課税事業を行っている個人の場合には原則どおり建物には消費税がかかります。そして、平成16年4月1日からは課税事業者は総額表示を義務づけられているため、不動産を購入する場合の価格とは当然に税込みの価格となっています。
| 補足) | 個人事業者については前々年、法人については前々事業年度の課税売上が1000万円を超える事業者は、消費税を納める義務があります。これを「課税事業者」といいます。 課税事業者に該当することとなった場合には、消費税を国に納付する義務が生じます。前々年または前々事業年度の課税売上高が1000万円以下の事業者は消費税納付義務を免除された「免税事業者」となります。 |
たとえば、総額1億円の土地付き建物を取得する場合を想定してみることにしましょう。売主が業者の場合は消費税がかかります。では、以下のように土地と建物割合が変わるとどのような影響があるのかを考えてみましょう。
下記の計算過程をご覧下さい。土地・建物比率が変わると、業者の受け取る金額も変わってくることがポイントです。今回の例の場合では、土地比率の高い場合に比べて、土地比率の低い場合では業者の受け取る金額は285万円も少なくなってしまうことが分かります。
| ・ 土地2000万円、建物8000万円(税込み)の場合 | ||
| 税込み価格 | 消費税を除いた 正味価格 |
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| 土地2000万円 | 土地は非課税のため | =2000万円 |
| 建物8000万円 | 8000万 |
=7619万円 |
| ―――――――――――――――――――――――――――――― | ||
| 業者の合計手取り額 | =9619万円 | |
| ・ 土地8000万円、建物2000万円(税込み)の場合 | ||
| 税込み価格 | 消費税を除いた 正味価格 |
|
| 土地8000万円 | 土地は非課税のため | =8000万円 |
| 建物2000万円 | 2000万 |
=1904万円 |
| ―――――――――――――――――――――――――――――― | ||
| 業者の合計手取り額 | =9904万円 | |
業者の受取金額の差額 9904万円−9619万円 |
= 285万円 |
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この例からも分かる通り買主としては減価償却の対象となる建物の比率をなるべく大きくしたいと考えるものですが、売主としては売買金額が決まっている以上建物比率が大きくなるとその分消費税で持っていかれる額が大きくなり、自分の手取り金額が少なくなるという利益相反の関係にあることがお分かりいただけることと思います。売主はなるべく建物の価格を小さくしようとするし、買主はなるべく建物の価格を大きくしようとする。
その点売主が個人の場合は原則として消費税がかからないので、土地・建物比率を変えたとしても売主の手取り額には何の影響もなく、その土地と建物割合を自由に設定するのに障害はありません。では売主が法人の場合はどうすればよいのか。売主が法人の場合には、消費税分を買主側で負担してあげればよいのです。消費税の余分な支払いは一時的な支出であるのに対して、建物割合を大きくすることは将来にわたり減価償却費という形で恩恵を受けることになります。仮に税込みで1000万円分建物割合を引き上げた場合を考えてみましょう。
建物割合を引き上げたことによる売主側の損失額48万円分を売主に支払えば、売主の実際の手取り金額は減りません。よって、この48万円は消費税のかからない土地金額の増額として扱います。(そうでないと、その余分に渡した48万円のうちの建物割合分にさらに消費税がかかってきてしまうからです)仮に所得税、住民税を合わせて30%とした場合、減価償却できる部分は900万円( 1000万円 × 0.9 )ですから、その900万円の30%、つまり270万円の節税ができたことになります。一方、購入時に余分にかかった消費税は48万円ですから、結局は222万円もの経費削減に成功したことになります。
ただし、これは建物償却の全期間にわたっての効果を合算したものであり、転売したり、税制が変わったりした場合にはこの計算がうまくいかない可能性があります。また、あまりにも建物評価額が一般的な評価よりも高くなった場合は、税務当局の解釈とズレが生じる可能性も無視できません。しかし、現時点での状況を考えると、「5%の消費税を余分に払っても、節税効果は十分に期待できる」 という結論に至るかと思います。まあこんなちょっとした知識でも知ってるのと知らないのとでは大きな差になるゾというお話でした。ちゃんちゃん。
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